毎週水曜日は仕事が深夜に及ぶのでタクシー必須なのだが、
今週はラッキーなことに終電に間に合う時間に仕事が終った。
(これをラッキーだと思ってしまうことがいやだけれども)
なのでラーメンでも食べて帰ろうと思い、会社を後にした。
会社から出て50メートルくらいの目黒新橋のところで、
行こうと思っていたラーメン屋の杏仁豆腐無料チケット
を会社に置き忘れてしまったことに気がついた。
僕はこの杏仁豆腐が大好きなので、この無料チケットがないのなら
行かない方がマシかも。と思って諦めかけたところ、なんと、
無料チケットが目の前に落ちていた。
(マンガみたいな話だが、ここはこの話の伏線となる)
人に踏まれまくってボロカスになったチケットでも躊躇せずに
拾い上げた。このボロ紙があのうまい杏仁豆腐になるんだから。
この時点で終電まであと30分だったので、ラーメンと杏仁豆腐を
食べて終電に乗るという予定を立てた。
チリンチリン♪(店に入る時に出る音。ウソ。本当はこんな音でない)
これ、煮込みラーメンとかいうメニューで味は良かったんだけど、
麺が延びてた。そういうメニューなのか。それとも作り手が悪いのか。
空条承太郎みたいに、まずいものには金を払わないというスタンスで
生きていきたいのだが、あんなに強くないし、オリジナリティ溢れる
学ランも着ていないので、キレずにしぶしぶ食べる。
食べる食べる食べる。
そして杏仁豆腐。
やばい。時間が。味にやばいといいたいけれども、時間の方がやばい。
なのに写真を撮ってる自分も自分だが。
終電まであと5分。いつもなら一個一個いつくしみながら味わうところを、
ばくばく口に放り込む。
会計は1万円札。悪いことは重なるものだ。釣りは要る!早くくれ!
ラーメン屋を出たら猛ダッシュしようと思ったが、信号待ち。
青になってから猛ダッシュ。ギリギリで駅に着いたときは、
終電の時間ピッタリ。でもそれは2分遅れていた僕の腕時計と
ピッタリなのであって、駅の時計は無情にも2分先を示していた。
こういうとき、無機物の時計にもいじわるさを感じる。
全力疾走して、血の気が足りなくなっている上に、さらに血の気が
引いた。仕方ないので自分の駅まで行かない真の最終電車に乗ることに。
そして終着駅に到着。自分の駅より3〜4駅手前。
引越してきてまだ3ヶ月なので、まだ地理が良く分からなかったが、
「理由:杏仁豆腐」でタクシー代を会社に請求できないから、歩くしかない。
ケチだから自腹はいやだ。あと、ここまでくるとむしろワクワクしていたのだ。
歩く歩く歩く。
深夜の環八に出た。明るい。車がうるさい。洋館がこわい。
歩く歩く歩く。
そして多摩川に到着。徒歩の丸子橋は初めて。
地元の駅の風景が見えたとき、少しほっとした。
ワクワクして歩いていたとはいえ、やっぱり緊張していたのかもしれない。
このようにして郷土愛はぐんぐん育まれていくのだなあ。良かった。
家に着いたのは深夜2時半だった。良くない。
いま思うと、あのとき目黒新橋で僕が拾ったボロ紙は、
杏仁豆腐の無料チケットではなくて、
丸子橋徒歩無料チケットだったんだね。